丈夫な骨や歯を作るための栄養素と言えば「カルシウム」です。出産や加齢により、カルシウムが不足すると、さまざまな健康リスクの原因となります。骨がもろくなりやすいことのほかにも、健康や美容、精神面にも悪影響がおよびます。
カルシウムは日本人が唯一不足する栄養素とも言われ、さらに日本人は牛乳からカルシウムが摂りにくいという意見もあるようです。それはなぜでしょうか?
カルシウム不足のリスクや、若さと健康を保つためのカルシウムの摂り方についてご紹介します。
カルシウムの役割とは
体内に摂りこまれたカルシウムは、その99%が骨や歯に使われる「貯蔵カルシウム」に、残りの1%は血液や筋肉、神経に使われる「機能カルシウム」として働きます。一般的にカルシウムは貯蔵カルシウムを指すことが多いですが、実はたった1%の機能カルシウムが生命を維持するための重要な役割を担っています。
「機能カルシウム」は、筋肉を収縮させたり、緊張を緩和させたりする働きや、脳神経に働きかけて精神を安定させる働き、さらには高血圧や動脈硬化の予防といった、まさに生きるために欠かすことのできない機能を持っています。
そのためカルシウムが不足すると、まずは機能カルシウムの補充が優先されて、骨や歯に蓄えられたカルシウムが血液中に送りこまれます。その結果、貯蔵カルシウムも少なくなり骨や歯がもろくなる悪循環に陥ることに。カルシウムは加齢とともに不足する傾向があり、日ごろからカルシウムを意識して摂取することがとても重要です。
カルシウム不足が引き起こす健康リスクとは
カルシウムが不足することで起こる健康リスクは、具体的にはどういったものなのでしょうか? 代表的な症状をご紹介します。
イライラ
脳の神経細胞の働きが低下してコントロールがうまくできなくなるために、イライラしやすくなります。
手足のつり、しびれ
筋肉の調整機能や神経伝達機能が低下することにより、収縮や緩和に支障が表れやすくなります。
高血圧、動脈硬化
カルシウムの摂取が足りないと、機能カルシウムが不足し、カラダは貯蔵カルシウムから不足分を補おうとします。それによって、一時的に機能カルシウムが高濃度になることがあります。この状況が続くと、血管壁にカルシウムが付着して血管が硬く細くなり、血流を妨げる可能性があります。
骨粗しょう症
骨や歯がもろくなり、骨折や虫歯のリスクが高まります。
子どもの成長不良
成長期に骨がうまく形成できず、十分な体格がつくられない恐れがあります。
必要摂取量(600~900mg)を摂らないと成長が止まってしまうことも。また、直接大人のようにイライラにつながるというものではありませんが、不足により脳機能低下につながるリスクもあります。
忘れっぽくなる
脳の神経細胞がうまく働かず、記憶力が低下します。
アトピーやがんのリスクが高まる
免疫力が下がり、さまざまな病気にかかりやすくなります。
このように、カルシウムは健康維持に欠かすことのできない栄養素です。体調が優れない日が続くときには、カルシウム不足を疑ってみてもよいでしょう。
カルシウムはどんな食品から摂れるのか
カルシウムを摂るためには、どのような食品を食べると良いのでしょうか? カルシウムが豊富な食品の代表といえば牛乳です。カルシウムの含有量がもっとも高く、本来は吸収率も良い食品ですが、日本人は牛乳からカルシウムを摂りにくいという意見もあります。
日本人には牛乳に含まれる成分を分解するための酵素が遺伝的に少ないため、牛乳を一度にたくさん飲むと下痢をしやすく、せっかくのカルシウムを吸収することができません。また、遅延型アレルギーの原因とも言われています。日本の土壌にもカルシウム不足の原因が。諸外国に比べて土壌に含まれるカルシウムが少なく、日本の野菜はカルシウム含有量が低めです。日本人は古くから魚を食べることでカルシウムを摂取してきました。ところが食の欧米化にともなって、魚の摂取量が減ってきたことも、日本人のカルシウム不足に拍車をかけています。これらの要因が重なって、日本人は慢性的にカルシウム不足に陥りやすくなっています。年代別のカルシウム摂取の目安量を参考にして、カルシウムを意識して摂取することを心がけてください。
1日のカルシウム摂取の目安量(年代別)
- 10歳未満 500ml
- 10歳~19歳 700~900ml
- 19歳~40歳 600ml
- 40歳~ 1000ml(加齢によるカルシウム吸収率の低下を補うため)
食品 | 単位 | カルシウム含有量 |
---|---|---|
牛乳 | 200cc | 200g |
プロセスチーズ | 25g | 115g |
丸干いわし | 1匹 | 350g |
豆腐 | 75g | 90g |
納豆 | 1パック | 45g |
小松菜 | 60g | 175g |
にぼし等の小魚なら3匹で1日の摂取量が補えますが、加工品の場合は塩分の摂りすぎにも注意しましょう。また、カルシウムの吸収率を高めるためにビタミンDを多く含む食品や、カルシウムの働きを高めるためにマグネシウムを含む食品とあわせて摂取するのがおすすめです。サプリメントを上手に利用すると、効率よく摂取できます。
20歳を過ぎたら、カルシウム維持を目指そう
カルシウム不足は老化を早め、精神状態や日常生活にも影響を及ぼすことがあります。20歳を過ぎたら体内のカルシウムは減少していくため、カルシウムを維持するための心がけはとても大切です。日ごろからカルシウムを意識的に摂り、適度な運動をすることで、骨が強くなり体内のカルシウムをキープしやすくなります。カルシウム不足を解消して、若々しい心とカラダを保ちましょう。
ポイント
カルシウム不足は健康リスクを高めます。カルシウムの吸収力を高めるビタミンDと一緒に摂取しましょう。
塩分の無駄な摂取をおさえ、カルシウムを摂取するためにはサプリの活用もおすすめ!